手術・治療SURGERY AND TREATMENT

変形性膝関節症の治療について

保存療法(手術以外の治療)

変形性膝関節症では原則的に保存療法(手術以外の治療)から開始します。

炎症を抑え痛みを緩和する内服薬や湿布などを使用したり、膝関節内へのヒアルロン酸注射、水を抜く注射、サポーターや中敷き(インソール)等の装具療法、筋力を鍛えたり可動域を改善させるリハビリなどを組み合わせて行います。

ヒアルロン酸注射

変形性膝関節症では関節内の潤滑油である「滑液」が減ってしまうため、 滑液の主成分であるヒアルロン酸ナトリウムを関節の中に直接注射し、補填する治療法です。ヒアルロン酸は水分を取り込む能力が高く、関節内の滑りを良くしてくれます。

ヒアルロン酸注射

装具療法

装具療法

膝の安定化させ負担を減らすサポーターのほか、足底版と呼ばれる中敷き(インソール)を靴に挿入する装具療法が多く用いられます。外側ウェッジなどと呼ばれる外側(小指側)が高くなった中敷きを靴に挿入し、O脚の矯正を行うことで膝への負担を減らします。

リハビリ

筋力が落ちたり、可動域が制限されて動かしづらくなった膝の機能を改善させます。
また、症状の悪化を予防するためにも重要です。

筋力訓練

膝への負担を減らすためには太ももの前側にある大腿四頭筋の筋力が重要とされています。大腿四頭筋を中心に脚の筋肉や、大黒柱である体幹の筋肉を鍛えます。

可動域訓練

変形性関節症では膝をピンと伸ばしたり、深く曲げたりすることが難しくなります(可動域制限)。適切に関節を動かしたりストレッチなどを行うことで、可動域の維持改善を狙います。

リハビリ

生活指導/減量

変形性膝関節症では膝を捻る動作や深くしゃがむ動作といった膝への負担が大きいと言われる動きを避けるようにしていただきます。そういった日常生活で膝に負担がかかる動作や、負担の少ない動き方などを理解し実践できるように練習します。

また、膝には歩行時には体重の0.3倍、階段昇降では約2.5倍~3.5倍、しゃがみ込みでは約7倍程度の負担がかかると言われています。体重が重たければその分膝への負担も大きくなることから、肥満傾向の方に対しては減量を勧めます。

減量

手術療法

内視鏡を用いた手術

膝の中に内視鏡(極小型のカメラ)を入れて行う手術で、関節内で傷ついた半月板や軟骨などを取り除いたり、増殖した滑膜を除去したり、関節内の清掃をします。小さな傷口で手術が可能で、重症ではない変形性関節症に行われる手術です。

当院での一般的な入院期間は3日程度となっています。

骨切り術

骨切り術とは、膝関節の骨の一部を切って、O脚やX脚の変形を矯正する手術です。手術では脛骨と呼ばれるスネの骨を一部切り取って脚をまっすぐに矯正し、ボルトやプレートで固定します。ボルトは一般的に1年ほどで抜くことが可能です。人工関節を挿入する手術に比べ、自分の関節を温存できることから、多くの場合手術後の日常生活やスポーツに制限がないことが特徴です。

骨切り術は比較的膝の動きが良い患者さんに行われ、軟骨のすり減りが膝関節の内・外側のうち、どちらか片側のみである人が適応となります。比較的若い方が適応の中心ですが、活動性が高い方の場合は高齢であっても行うことがあります。関節の変性・変形が強く、動きが悪くなってしまっている場合などには効果が限定的であり、後述の人工関節置換術が適応となります。

人工膝関節置換術(TKA・UKA)

人工膝関節置換術は、その名の通り膝の関節を人工の物に取り替えてしまう手術です。

傷んだ軟骨や骨を削り、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工関節を挿入します。症状が進行しており、保存療法で十分な効果が得られなくなった場合に検討します。また、人工関節の耐用年数は15年とも20年とも言われており、年齢が若いうちに手術を行った場合、入れ替える手術を行う必要があります。ただ20年以上使用しても問題ない症例も多く、手術を行う患者様も高齢であることが多いため、人工関節の寿命によって実際に入れ替え手術を行うことは稀です。状態に応じて、関節全体を入れ替える全置換術(TKA)と、傷んでいる片側のみを入れ替える片側置換術(UKA)が行われます。

当院での一般的な入院期間は2~3週間程度となっています。

人工膝関節置換術(TKA・UKA)

手術後のリハビリ

手術後のリハビリ

手術後は膝関節の可動域や筋力を取り戻すためにリハビリが必要です。

装具の有無や可動制限、荷重制限などが手術内容によって異なりますので、状態に応じたリハビリが行われます。入院期間は内視鏡手術で3日程度、人工関節置換術では2~3週間程度ですが、必要に応じて退院後も外来通院でリハビリを行います。