再生医療の四生体材料とは?COLUMN
目次
iPS細胞抽出成分・自己脂肪由来幹細胞・幹細胞上清液・血小板
再生医療で用いられる4種類の生体材料

4種類の再生医療用材料の比較

自己脂肪幹細胞の再生医療

- 脂肪組織の採取:通常、体内で幹細胞が最も多く元気に存在する腹部の脂肪組織を採取します。
- 幹細胞の分離と培養:脂肪組織を処理して幹細胞を分離し、完全無菌室で4〜5週間培養・増殖します。 幹細胞は約2億個まで増殖します。
- 脊椎・関節内への注入:分離・培養した自己脂肪幹細胞1億個を脊椎へ注入します。所要時間は約5分です。必要に応じて1億個を2回注入し、さらなる 効果を期待します。
- 静脈点滴:体力低下や慢性疼痛、動脈硬化の予防・治療には、静脈内への点滴が用いられます。
目的と期待される効果
- 神経再生:脂肪由来幹細胞は神経組織の再生を促し、神経機能を回復します。
- 炎症の軽減:幹細胞の抗炎症作用により、慢性的な炎症が軽減します。
- 痛みの軽減:脊椎に関連する痛みや不快感を軽減します。
- 組織の修復:椎間板・硬膜・神経根等の損傷が修復されます。
※ 利点:自己細胞を使用するため、拒否反応やアレルギーのリスクはほとんどありません。
幹細胞培養上清液による簡便で安全な再生医療

若年由来幹細胞を培養して約1億倍に増殖させた上清液には、活性の高いタンパク質や生理活性物質が豊富に含まれています。冷凍保存されているため、必要な時に解凍してすぐ治療に利用できます。治療を重ねることで効果はより強く、また持続的に現れます。さらに、自己脂肪由来幹細胞との併用により、治療効果が一層高まることが期待されます。また、手術前あるいは術後に上清液の点滴を行うことで、長期間障害を受けていた神経の機能回復を促進する作用も認められています。
幹細胞上清液を用いた多用途治療法

乳歯幹細胞培養上清液は多種の生理活性物質を含む

乳歯髄神経細胞の培養上清液は神経損傷に有効
乳歯の歯髄から幹細胞を分離し、約4週間培養すると、およそ1億倍にまで増殖します。
この過程で細胞は自らさまざまなタンパク質を分泌し、それらを自己の栄養源として利用しながら増殖を続けます。分泌された成分には、成長因子・サイトカイン・エクソソームなどの生理活性物質(タンパク質)が多く含まれており、これらをそのまま冷凍保存します。保存したものを解凍し、障害部位への注入や点滴、点鼻などの方法で投与することで、患者様ご自身の幹細胞が持つ「再生力」を高め、自己治癒力を引き出します。
組織修復・創傷治癒促進:損傷した組織や細胞の修復および再生を促し、皮膚・筋肉・神経・内臓など、さまざまな組織の回復が期待されます。
抗炎症・鎮痛作用:炎症による痛みや腫れを抑えて、関節痛や筋肉痛を和らげます。
神経組織修復・慢性疼痛緩和:末梢神経や中枢神経の損傷の回復を促し、脳梗塞や脊髄障害の改善に寄与します。また、関節痛・腰痛・肩こり・五十肩・ゴルフ肘などの慢性疼痛にも有効です。
免疫調整作用:異常な免疫反応を抑え、自己免疫疾患やアレルギー疾患を緩和する。
血管新生・血行促進:血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が血管の新生や再生を促し、血流の改善や創傷治癒を助けます。
抗酸化・抗老化作用:活性酸素を除去し、細胞老化や生活習慣病を予防します。
美肌・美白、アンチエイジング:肌のターンオーバーを促進し、シワやたるみの予防、皮膚および毛髪の再生、肌質の改善など、美容領域でも幅広く活用されています。
次世代PRP療法APS(Autologous Protein Solution)

自身の血液の血小板を濃縮したPRP(Platelet=血小板、Rich=豊富、Plasma=血漿)を、特殊加工により抗炎症因子と成長因子を高濃度に抽出したものが、自己タンパク質溶液APS(Autologous Protein Solution)です。
血小板の役割
切り傷などの出血は血小板の働きで止血され、組織損傷による皮膚や筋肉の欠損も血小板が放出する成長因子により速やかに修復が促されます。また、トカゲの尾が再生するのも、豊富な成長因子が関与するとされています。
椎間板線維輪の亀裂修復
椎間板の外側は線維輪(肉まんの外皮に相当)と呼ばれ、ぎっくり腰では線維輪の亀裂部より、内側の髄核(あんに相当)がはみ出したり、炎症性物質(肉汁に相当)が漏出して神経を化学的に刺激し、さらに糊のように神経に癒着して腰痛を生じます。PRPに含まれる成長因子は、この亀裂の修復・再生を促し、腰痛を軽減します。

関節軟骨修復と鎮痛
関節痛は滑膜の炎症により、関節内にTNF-αやIL-1とい った炎症性物質が産生され、滑膜の腫脹や軟骨分解が進むことが原因です。
血小板由来成長因子を高濃度に含むAPSには、抗炎症作用による鎮痛効果をもたらすタンパク質と、軟骨保護に寄与する有益なタンパク質が 多く含まれています。
手術をするほどではないものの、ヒアルロン酸注射を繰り返しても効果が乏しい場合には、有力な治療選択肢となります。

アスリートの関節靭帯損傷は血小板再生治療や自己脂肪幹細胞の治療が選択されることが多い
但し、重度傷害には内視鏡手術や靱帯形成術が利用される

血小板を用いた関節の再生医療は概ね約80%に有効で、特に靱帯の部分断裂が良い適応とされています。
実際、プロ選手では田中将大選手やドジャースのクレイトン・カーショー選手が肘内側側副靱帯部分損傷に対し、多血小板注射と自己脂肪由来細胞の併用及びリハビリで競技復帰しています。
一方、約20%では効果が乏しく、靱帯の完全断裂では手術が必要です。大谷翔平選手や斎藤佑樹選手も再生医療で一時的改善を得たものの、最終的には手術を行い完治に至っています。
血小板再生医療の適応年齢は?

高齢になると血小板の形態や機能が低下するため、再生医療は60歳以上では推奨されません。
40歳代までは自己多血小板PRPが適応となり、高齢者には乳歯幹細胞培養上清液、自己脂肪由来幹細胞、あるいは臍帯血由来iPS細胞抽出成分が有益とされています。